交通事故のため、わずか十歳で逝った長女えみるさん。悲しみ、憎しみ、後悔、恐怖。それからの十年の歳月を残された家族は「希望」とどう向き合って生きてきたのか。風見しんごさんによる亡き長女えみるさんとの思い出を綴ったベストセラー「えみるの赤いランドセル」から8年ぶりの書き下ろし作品。交通事故により、わずか10歳と11か月で逝ったえみるさんは、生きていれば今年、20歳になり成人式を迎えるはずでした。あれから9年余、姉のえみるさんの歳を超えた次女ふみねさん、妻の尚子さん、そして風見しんごさんら、残された家族は「愛する者の喪失」と「癒えない傷」のトラウマに、どう希望を紡いでいったのか。父の介護、次女ふみねさんの決意、妻尚子さんの闘い、二匹の愛犬を通して届くえみるさんの心の声、そして新たな哀しみの出来事。ドラマはさまざまな問題を抱えながら、思わぬ方向へ展開していくのだが……。これは生と死をめぐる、風見家の凄絶なる家族愛のドラマである。愛を紡ぐ――。「えみるが最後に見た風景は、どんなだっただろう」と1日に1度考えてしまうのです。 よく「悲しみを越えるには」と色々問答されるが、僕は、悲しみの中には、一生越えることのできない悲しみもあるのではないかと思うようになった。だから越える必要もないと考えるようになった。確かに人生において越えなければならないものはある。しかし、越えられないものもある。そこには常に悲しみがついてまわるかもしれない。それでも、忘れようとするよりも、我慢せずに、愛する人や子供の面影を追い続けたほうが、生きることが楽になるのではないか。そうしたことが、えみるのことをちゃんと受け止めていく作業につながっていったのではないかと。(本文より)『作者介紹』風見 しんご(カザミ シンゴ) 1962年、広島県生まれ。18歳のとき、萩本欽一氏に見いだされて、芸能界へ入る。ドラマやバラエティー番組、映画、舞台などで活躍。『僕、笑っちゃいます』『涙のテイク・ア・チャンス』などのヒット曲をもつ。1994年、歌手・荒井晶子と結婚。二女をもうける。2007年1月17日、長女・えみるちゃん(享年10歳)を通学途中の交通事故で亡くした。2008年1月、亡き長女との恩愛の記『えみるの赤いランドセル』(青志社刊)を上梓。命の大切さについて講演活動を各地で続けている(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)